
当代きっての笛の名手であり、雅楽の古楽曲の復興に力を注いでおられる芝祐靖先生と雅楽演奏グループ・伶楽舎が、二枚の意欲作CDをリリースします。
まず一枚は、『伶楽舎 芝祐靖の音楽 復元正倉院楽器のための「敦煌琵琶譜による音楽」』。
かつて栄えたシルクロードの都市、敦煌。そこには600あまりの洞窟を埋め尽くす仏像や壁画で名高い莫高窟(ばっこうくつ)が伝わります。その洞穴から発見された巻物の中に、琵琶の譜面が含まれていました。
当初この譜面は解読不能とされていました。しかし、シルクロードの東の終着点であるここ日本には、1400年以上にわたりその命を保ち続けていた雅楽と、古楽器たちを大切に守り伝えてきた宝物庫・正倉院があり、これらを手がかりに琵琶譜は読み解かれました。
甦った琵琶譜は、芝祐靖先生によって復曲され、今回長年、正倉院の復元楽器と深く関わりそれらを奏でてきた伶楽舎による演奏の新録音のCDとして発売されます。
収録の楽曲の詳細や、演奏者のクレジットは◎こちらをご覧下さい。(日本伝統文化振興財団のサイト)
CDには、復曲された芝祐靖先生と伶楽舎の宮丸直子さんによる楽曲と楽器の解説がまとめられ、また岡野玲子の書きおろしイラストとエッセー「仙人の見せる夢幻の世界(敦煌琵琶譜による音楽)」が収められました。
次の一枚は、『伶楽舎 芝祐靖の音楽 古典雅楽様式による雅楽組曲「呼韓邪單于(こかんやぜんう)」』。
西暦30年頃、匈奴の王・呼韓邪單于は漢の元帝に拝謁し、帝から美女・王昭君を賜りました。
元帝の後宮から遙か異国に嫁ぎ、望郷の悲しみをたたえながらその民に尽くした王昭君の物語は雅楽曲「王昭君」がありますが、同じくこの物語をモチーフに、芝祐靖先生によって歌曲つきの古典形式組曲として作曲された作品が「雅楽組曲 呼韓邪單于」です。
演奏はこちらも同じく伶楽舎、2011年に府中の森芸術劇場にて全曲演奏されたときの録音です。
収録の楽曲の詳細や、演奏者のクレジットは◎こちらをご覧下さい。(日本伝統文化振興財団のサイト)
古楽器と古典曲を追い求め、眠っていたその響きに新たな命を吹き込んで現代のわたしたちに届ける第一人者である芝祐靖先生と、先生を音楽監督に精力的な演奏活動を続けてきた伶楽舎の皆さん。
長年にわたるその息の長い取り組みは、ひとたび縁が絶えると千々に散り消えてしまう貴重な宝物たちを、さらに次代へと繋ぐかけがえのないものです。
その調べは、遙か昔の世界の彼方から届けられた豊饒の世界。ぜひひととき、その深く豊かな輝きの中に遊んでみてください。

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